関税法 輸入と輸出について
こんにちは、のりぞーです。
それでは通関士の勉強を始めていくのですが、本格的に勉強していく前にまずは私たちが普段から「輸入」「輸出」と呼んでいる行為について最初に触れていきます。
じつは私たちが知っている輸出入と実際の輸出入とでは意味が違うのです。
通関士用語については下線を引き、用語確認の見出しを後ろにつけているので分からないものがあれば確認してください。
輸入
①輸入の3つパターン
関税法上において輸入とは以下の3つのパターンの貨物を本邦に引き取ることをいいます。
- 外国から本邦に到着した貨物
- 外国の船舶によって公海で採捕された水産物で本邦に到着した貨物
- 輸出の許可を受けた貨物
1つ目はそのままの意味で普段から僕たちが輸入と呼んでいる手段で運ばれてきた外国貨物のことです。しかし2つ目の貨物からは少し説明が必要になるでしょう。
公海で採捕される水産物というのは、それを採った船舶が所属する国の物になります。だから公海の同じ場所にイギリスの船舶と日本の船舶があった場合、おなじ水産物を採捕したとしてもイギリスの船舶が採ったものはイギリスの物。つまり外国貨物となるわけで、これを本邦に引き取るということは当然輸入に該当します。
※ここで注意してほしいのが公海の範囲。ここでの公海は本邦と外国の排他的経済水域を含めたより範囲の広い海域のことをいっています。つまり日本の排他的経済水域で外国の船舶が採った水産物は外国貨物となります。「じゃあ排他的経済水域なんて必要ないじゃん!」と思いますが、要は排他的経済水域で行われる資源の採取に関しては沿岸国が主権的権利が認められているということ。資源を取っちゃだめ!というわけではありません。
そして最後の輸出の許可を受けた貨物についてですが・・・分かりにくいですよね。じつは輸出の許可を受けた貨物というのは関税法上、まだ日本にあったとしても内国貨物ではなく外国貨物として扱われます。一度輸出許可を受けた貨物は外国貨物になるわけですから、それをまた本邦に引き入れるということは輸入にとなるわけです。
以上3つの貨物は保税地域に一時的に集められたのち、税関によってその中身をチェックされます。中身が問題なければ税関に関税を支払い、税関長に輸入の許可をもらえば晴れてその貨物は輸入されたことになり内国貨物となります。
つまり輸入とは「輸入の許可を得て外国貨物を国内貨物にすること」であって、海外から貨物を日本に持ってくるだけではまだ輸入が完了したとは言えません。僕も初めて聞いたときは驚きましたが、一般的に言われている輸入とは少し違うということを覚えておきましょう。
用語確認
- 本邦・・・日本のこと。
- 本邦に引き取る・・・外国貨物が輸入の手続を行い国内貨物として扱われるようにすること。(輸入と同じ意味)
- 保税地域・・・関税未納のまま外国貨物を置くことができる場所のこと。
- 主権的権利・・・管理できる権利のこと。
②みなし輸入
みなし輸入とは「ある条件下において外国貨物が本邦に引き取られる前に消費、使用されるときは輸入としてみなす」ということです。国際見本市という施設はご存知ですか?
ここでは海外の食べ物や商品が売られたりしていますが、この国際見本市は先ほど出てきた保税地域というものに該当し、外国貨物を外国貨物のままで置いておくことができる場所の一つとなっています。
ここでお酒の試飲などをしたときは輸入はされていないのに貨物はなくなってしまうわけですから、こうした場合にはそのお酒を輸入したとみなすわけです。
もちろんこうした条件下以外では、外国貨物を消費することは認められていません。
このみなし輸入という仕組みがなければ、外国貨物であるお酒を試飲するためにわざわざ輸入の手続をする必要が出てくるため、とてつもなく面倒くさい事態になってきます。こうした手間を省くためにもみなし輸入は大事な仕組みとなっています。
ただし外国貨物を外国貨物のままで消費してもよいという例外もあります。↓
- 保税地域において関税法で認められているところに則って外国貨物が使用、消費される場合
- 外国貨物である船用品、機用品を本来の目的に従って使用、消費する場合
- 旅客、乗組員が携帯品である外国貨物を個人的な用途に使用、消費する場合
- 外国貨物を税関職員等権限のある公務員がその権限に基づき使用、消費する場合
1つ目は外国貨物を外国貨物のまま使ってもよいと関税法で認めらている場所で使用、消費された場合をさします。保税地域の1つである保税工場では外国貨物を原材料として製品を製造することを許可されているので、こうした場所では外国貨物を消費しても輸入には当たらないないのです。
2つ目は例えば日本の船が外国から帰ってくるとき航海中に、補給のために外国貨物である燃料を消費するといった場合を差します。ここでいう船用品、機用品とは燃料だけではなく乗組員などにとって必要不可欠な飲食物なども含まれています。
3つ目は海外で買ってきたチョコレートを空港の税関を通過する前にその場で食べたといった場合を差します。要は海外で食べてきたときと同じ扱いになるということです。
最後の4つ目は輸入するために保税地域に置かれる貨物を検査で税関職員がそれを使用、消費するといった場合をさします。こうした税関の検査は貿易取引の適正化や安全の維持を目的としており、ビジネスとは違う次元の行為であるため輸入とはみなさないということです。
「税関への手続を行い外国貨物を内国貨物にすること」が輸入であるのに対し、みなし輸入は「税関への手続なしに外国貨物を内国貨物として処理すること」と覚えておけば少しはややこしい感じを払拭できるのではないかなと思います。
例外では「外国貨物を外国貨物のままで処理すること」について書いてあるのだと考えてもらえれば大丈夫です。
用語確認
- 国際見本市・・・海外の企業が集まって商品の展示を行う場所。保税地域の1つ。
- 保税工場・・・外国貨物を関税を収めずに加工、製造等を行える保税地域の1つ。
- 船用品、機用品・・・航海、航空に必要不可欠な資材。船員の食料等。
輸出
次は輸出についてです。といいたいところですがこっちは至極単純。
輸出とは「内国貨物を外国に向けて送り出すこと」のことをいいます。
ただし外国貨物を外国貨物のまま外国に向けて送り出す場合があります。こちらは輸出とはいわず積戻しといい、主に頼んでいたものと違う荷物が届いたときに行われます。
外国貨物と内国貨物について
ここまで平然と外国貨物、内国貨物という単語を使ってきましたが、関税法においてその定義が定められていますのでここで説明しておきます。
外国貨物とは以下のいずれかの貨物で輸入の許可を受ける前のものをいいます。
- 輸出の許可を受けた貨物
- 外国から本邦に到着した貨物
- 外国の船舶により公海で採捕された水産物で本邦に到着した貨物
「輸入」のところで説明した貨物が外国貨物にあたるところです。2と3で明記されているように外国から日本に到着しているとしても、輸入の許可がおりていない貨物については外国貨物として扱われるので注意してください。
次は内国貨物について。
- 本邦にある貨物で外国貨物でないもの
- 本邦の船舶により公海で採捕された水産物
外国貨物の定義と対になるように覚えておくと楽です。ただ2度目になりますが公海の範囲については注意してください。排他的経済水域は含まれます。
みなし内国貨物
輸入とは「輸入の許可を得て外国貨物を内国貨物とすること」をいいました。
しかし、例外として「輸入の許可を得ていなくても外国貨物が内国貨物とみなされる」場合があります。これをみなし内国貨物といいます。要はいちいち税関を通していないということなのですが、いまいちピンと来ない人も多いと思います。まずはどういったものがみなし貨物となるのかを見ていきましょう。
- 日本郵便株式会社から交付される課税価格が20万円以下の郵便物、信書便物の送達を行う者から交付された信書
- 保税展示場の許可期間満了後、なお保税展示場にある外国貨物に対し、関税が徴収されたもの
- 収容等された貨物で、公売又は随意契約により売却されて買受人が買い受けたもの
- 法令により没収されたもの。輸入に際し罰金が必要だと通告された貨物で追徴金を納付したもの、または納付せずに没収されたもの。刑事訴訟法の規定により売却、没収、または国庫に帰属したもの。銃砲刀剣類所持等取締法の規定により売却、または国庫に帰属したもの。
- 保税工場、保税展示場、総合保税地域における場外作業許可を受けたが、期間内に持ち帰らずに関税を徴収されたもの。
(1)課税価格20万円以下の郵便物
まずは1つ目、日本郵便を通して海外からくる課税価格20万円以下の郵便物は税関長の許可を得ずに国内貨物とみなされます。ここで注意してほしいのがこの郵便物が国内貨物になるタイミング。日本郵便を通過してから国内貨物になるわけではなく、配達人が名宛人(郵便物を輸入する人)の手に渡った瞬間に内国貨物になります。
(2)保税展示場の放置物
保税展示場は税関長によって期間が定められていて、その期間内であれば外国貨物を置いてもいいという保税地域となっています。この期間が終わるまでに外国貨物を撤収すればいいわけですが、たまにそのまま放置してしまう企業があるみたいですね。外国貨物はいついかなる時も保税地域を除いて国内に置いておけないので、輸入手続の代わりに関税を徴収し国内貨物とみなすわけです。
(3)購入された収容物
保税展示場の期間が満了したにもかかわらず放置された外国貨物などは、一時別の保税地域にて保管されます。これを収容というのですが、収容してから一定期間経過しても輸入者が現れないときは公売や随意契約という形で一般人や企業に売り出されます。こうした外国貨物が購入された場合にはそこで得た代金で関税を徴収したとみなすので内国貨物として扱われます。
(4)没収された貨物
没収は収容とは違い返還されることはなく、没収された時点で内国貨物とみなされます。没収されるのは主に密輸された麻薬などです。関税の徴収はありません。
(5)場外作業期間経過後の貨物
保税工場で加工できないものを扱う場合日本国内の別の工場で作業を行うのですが、国内の工場は保税地域ではないので国内貨物以外は置くことができません。こういう場合は税関長に場外作業の許可を得るのですが、こちらも保税展示場と同様に期間が設定されており、これを過ぎると関税が徴収されます。保税展示場の外国貨物を修理したいという場合にも場外作業の許可を取る必要があります。
これらの場合はいちいち輸入手続を行わず、代わりに関税を徴収することで輸入の代わりとしています。似たような表現にみなし輸入という言葉がありましたが、みなし内国貨物と大きな違いとして「貨物がそこにあるかどうか」を考えてもらえれば特に混同することもないかと思います。
これからどんどんややこしくなっていきますが、輸出と輸入については常に関わっていくことになるので頭の中でしっかりイメージできるようにしておいてください。輸入手続と輸出手続の具体的な流れについては別の記事で書くのでそちらを参考にしてください。
用語確認
- 保税展示場・・・外国貨物を外国貨物のまま展示できる保税地域のこと。博物館など。
- 総合保税地域・・・保税展示場、保税工場、保税蔵置場の総合的な機能を併せ持った保税地域のこと。中国国際空港など。
- 保税蔵置場・・・外国貨物の積卸しや運搬、一時蔵置を行う保税地域のこと。倉庫など。
- 公売・・・差し押さえた財産、貨物を入札や競売という形で売り出すこと。
- 随意契約・・・入札がない場合などで、適当な相手を選び販売する契約のこと。
- 国庫に帰属する・・・国の金庫に入る、つまり国の資金となること。
通関士という国家資格をご存じですか?
こんにちは、のりぞーです。
お待たせしましたがやっとこさ記事を更新していこうかと思います!
いやー文章書くって難しいですねほんと。。。
何を書けばいいのか全然頭に浮かばなくてつい先伸ばしにしてしまいます。
やっていくうちに慣れてくるのかなーなんて楽観的に考えてはいるのですが、まだまだ先は長そうです。
なんにせよせっかく作った勉強ブログをここで終わらせるわけにはいかないので、まずは通関士のことについての記事を書くことにしました。
つたない文章になりますがどうぞ見てやってください↓
通関士って何をする人?
通関士の「通関」ってどう意味か分かりますか?
あまり聞き慣れない単語ですよね。
もったいぶらずに答えをいってしまうと、通関とは「税関を通過すること」を意味しています。海外旅行に行くとき、空港の税関にて荷物のチェックと手続を受けますよね?あれのことです。
この税関を通過して日本から海外に荷物を持っていくこと、および海外から荷物を持ち込むことを通関といいます。
関税による荷物のチェックと手続は貿易として輸入または輸出される貨物についても同様に行われるのですが、その場合は条約や関税の徴収などのために非常に多くの手続を行う必要があります。
・・・そう、面倒くさいんです。
そんな面倒くさい通関業務を企業、個人からの依頼を受けて代行する。
つまり「企業及び個人の代わりに通関業務をやってあげる」というのが通関士の主な仕事になります。
何を勉強するの?
通関士は企業や個人の依頼を受けて代わりに通関業務を行うことが仕事になるので、通関業務に必要な知識と必要書類の作成方法を勉強していくことになります。
具体的には以下の法律↓
- 関税法
- 関税定率法
- 関税暫定措置法
- 外国為替及び外国貿易法
- 通関業法
と、
- 輸出、輸入申告書やその他通関書類の作成
- 関税額等と課税価格の計算方法
- 関税率表の見方
などの実務について勉強することになります。
法律についてそれぞれ少し説明すると・・・
関税法には文字通り関税について記されていて、主に輸出入にかかる手続とそれに関わる業者の認定、保税地域、課税要件などについて学びます。
次の関税定率法は主に課税の決定方法など、関税暫定措置法においては主に特恵関税制度による減免税などが書かれています。
外国為替及び外国貿易法はそのままで、外国貿易を行うために必要なものがかかれています。通関士として勉強するのはこの法律の中の「輸出貿易管理令」と「輸入貿易管理令」の部分ですね。
そして最後の通関業法にはこれから勉強していく通関士や通関業者についての規定が定められています。
実務の部分についてはここで説明するには難しいので、改めて記事を作ったときにでも説明していきますのでそちらをご覧ください。
作れたらリンクを貼っておきます。
通関士試験について
通関士試験は年に一度しかなく、その年で合格できなければまた来年挑戦してねという国家試験になっています。シビアですよね。
毎年全国から1万人前後が試験に応募しており、去年の場合だと、うち6,997人が受験していました。
国家試験の中で最もメジャーな(と勝手に思っている)税理士試験の受験者数は35,589人であることから、通関士という資格はあまり認知度が高くないように思えます。
しかしかといって受験者数が少ないから試験が簡単であるわけではなく。
見たところ去年の通関士試験合格者は688人。およそ10人に1人が受かっているという計算でした。税理士試験の合格者は6,902人でおよそ5人に1人が受かっているということから、通関士試験は難易度難易度も高めであるように思えます。
まあ、勉強して合格基準を満たすことができれば誰でも通関士になれます。ですので僕も勉強している道中。一緒に合格目指して頑張りましょう!
と言っておきますね。(笑)
そして試験内容ですが、こちらは以下の3つの科目に分けて行われます。
- 通関業法
- 関税法等その他の法律
- 通関書類作に成等の通関実務
配点は(1)が45点、(2)が65点、(3)が45点の計150点満点で構成されています。出題形式については(1),(2)が選択と択一、(3)がそれらに加えて計算式も出てきます。 通関士試験の日程については毎年官報の方に詳細が出ているので、そちらを確認していただければ分かるかと思います。
今年第51回目分の受け付けはもうすでに終了しているため受験することは出来ませんが、第52回目の通関士試験を受ける場合はこちらの税関ホームページにて確認するようにしてください。
だいたい6月~7月のうちに試験案内が出るようです↓↓↓
試験は基本10月の下旬ごろになっているので、いまからちょうど1年くらいです。
・・・一緒に頑張っていきましょう!(2回目)
最後に
通関士という職業が関わる貿易は日本経済を根本から動かす非常に重要な役割を帯びています。つまり素早く滞りなく輸出入が進めば、その分企業は素早く商売に繰り出すことができその分経済も早く回るというものです。
しかし税関への手続や提出する書類に関する小さなミスによって遅延が発生すると、依頼した企業及び海外企業などに様々なトラブルが生じるため、それらが結果的に企業の不利益に繋がってしまいます。
通関業者にとっても信用問題に関わるので、通関士という仕事はちょっとした不備さえ許されない非常に責任の重い仕事になっているわけです。
通関士試験に合格するためには多大な勉強量をこなし難しい法律等しっかりと頭に叩き込まないといけないわけですが、こうした重い責任に潰されないために必要不可欠なものをコツコツ積み上げているんだと考えれば少しは勉強の甲斐もあるのかもしれません。
まあしんどいものはしんどいですけどね。(笑)
とにかくこれから始まる通関士の勉強に圧倒されないためにも、3度目にはなりますが一緒に勉強を頑張っていきましょう~!
それでは改めましてどうぞよろしくお願いします!